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水木しげると海外怪奇小説 PART 4
■「墓をほる男」(「墓をほる男」太田出版 平成11年)143pp
初出 「墓をほる男」昭和37年 文華書房
■「怪骨」(「悪魔くん」SUN SPECIAL COMICS 朝日ソノラマ 平成4年)31pp
初出 「少年キング」昭和42年2月12日 少年画報社
→「十三階の女」フランク・グルーバー 「SFマガジン臨時増刊 怪奇・恐怖特集号」昭和36年
「アンソロジー・恐怖と幻想 第2巻」月刊ペン社 昭和46年
"The Thirteenth Floor" Frank Gruber (1904-1969)
"The Supernatural Index" にあたったところ、原作者フランク・グルーバーは1940年代に米国のパルプ雑誌「ウィアード・テールズ」に、たった3作の短編を発表しただけで、完全に埋もれてしまった作家のようだ、と思ったのは間違い<(_ _)> 自伝 "THE PULP
JUNGLE" (Sherbourne Press, 1967) ほか、50冊以上の著書がある。ミステリー、ウェスタン小説の分野で多数の作品を残した偉大なパルプ作家。
本作について、前述の自伝から引用しておこう。'A fantasy, "The Thirteenth
Floor," has gone into eighteen anthology printings and is currently in a
Harper & Row High School English Reader.'
原作の初出は「ウィアード・テールズ 49年1月号。(2005.4.16.追記)
「ウィアード・テールズ」49年1月号
■「死人つき」(「死者の招き」朝日ソノラマ サンコミックス 昭和42年7月19日初版)21pp
初出 「月刊別冊少年サンデー」昭和42年(67年)3月号 小学館
→「妖女(ヴィイ)」ゴーゴリ 世界恐怖小説全集(東京創元社)第10巻 「呪の家」
"Viy"
Nikolai Vasilyevich Gogol (1809-1852)
原作は1835年の短編集 Mirogorod
所収。水木ヴァージョンでは舞台を越前の国に移しての翻案作品となっている。
「卒業制作、深夜放映、13年後の一般公開。伝説のカルト・ムービー!この映画は、1967年、監督高等課程の卒業制作としてモスフィルムで製作され、日本では1971年、テレビの深夜番組として放映された。怪奇と幻想に満ちた、あだ花的ソビエト映画として熱狂的なファンの支持を得てテレビ放映を重ね、その後、ビデオも発売された。1984年に日本登場以来13年ぶりに一般公開され、今なお新世代のファンを魅了し続ける伝説のカルト・ムービーである。」(RUSSIAN CINEMA COUNCIL COLLECTIONホームページより)
ソビエト(!)映画「妖婆 死棺の呪い」との前後関係が気になっていたのだが、1971年(昭和46年)テレビ放映とのことなので、水木センセイの方が先だったことが確認できた。
■「水晶球の世界」
初出 (「黒のマガジン 2」東考社 64年(昭和39年)
→「卵形の水晶球」H・G・ウェルズ 怪奇小説傑作集Ⅱ(世界大ロマン全集 38) 昭和33年(1958)
"The Crystal Egg" Herbert George Wells (1866-1946)
ゲゲゲの鬼太郎「地獄流し」の巻では一部アイデアを借用していただけだが、それ以前の本作品は全面的な翻案
ものとなっている。(2005.3.21記)
■「鉛」(「黒のマガジン 4」東考社 64年(昭和39年)51pp
■「木枯し」(「死者の招き」朝日ソノラマ 67年(昭和42年) 10pp
初出 漫画サンデー 実業之日本社 66年(昭和41年)
→「泣きさけぶどくろ」F・M・クロフォード 怪奇小説傑作集Ⅱ(世界大ロマン全集 38)昭和33年
"The Screaming Skull" F. Marion Crawford (1854-1909)
「水木しげる叢書 第二巻 黒のマガジン傑作集I」(青林堂 92年)の解説「『黒のマガジン』と桜井昌一」(伊藤徹)によると、「当初、「泣き叫ぶドクロ」とタイトルが予定されていた本編であるが、『鉛』に改題された。」とある。後年、同じ原作を元に「木枯し」を発表するが、こちらのほうは10ページの短編。(2005.3.20記)
■「血太郎奇談」(「悪魔くん」朝日ソノラマ SUN SPECIAL COMICS)
初出 希望の友(潮出版社) 72年(昭和47年)
→「血の末裔」 リチャード・マシスン
「真紅の法悦 怪奇幻想の文学Ⅰ」(新人物往来社)昭和44年
"Blood Son" Richard Matheson (1926-)
ストレートな翻案作品。扉絵にはちゃんと原作名入ってます(笑)。(2005.3.19 記)
■「終電車の女」(水木しげる作品集I 異界への旅 中央公論社)
初出 週刊女性(主婦と生活社) 70年(昭和45年)1月3日号
→「白い粉薬のはなし」 アーサー・マッケン(「世界恐怖小説全集3 怪奇クラブ」東京創元社)
"The Novel of the White Powder" Arthur Machen (1863-1947)
友人の「赤鼻」の家で薬を飲んだ主人公は、幽霊の女が見えるようになる・・・。ストーリーは牡丹燈籠風な展開だが、謎とき部分は明らかにマッケンからの借用だろう。
少々長くなるが、マッケンから引用する。「・・・あの粉薬は、君の手でどう分析しても、まるでなんの結果も出ないという話だったが、それはむりもないことだと思う。あれは何百年も昔に知られていた薬で、あんなものが今時の薬屋の店にあるなんて、ぼくなどまったく予期もしないことだったよ。薬屋のおやじの話を疑う理由もなさそうだし、おそらく、おやじが言うとおり、問屋からちっとばかり不純な塩剤を仕入れたのにちがいなかろう。それが二十年も、あるいはもっと長く棚ざらしになっていたのだろう。ここで、いうところの偶然とか暗号とかいうものが働きだすのだが、つまり、そういう長い年月の間、罎のなかの塩剤は、おそらく摂氏四十度から八十度を上下する、その時々で違う温度にさらされていたわけだ。その間に、いつとはなしに偶然になんらかの変化が生じ、その変化が一進一退して、さらにそこに複雑微妙な、― はたして近代科学の実験装置で精密に実験操作をしてみても、それと同じ結果が得られるかどうか分らない、と思えるほど複雑微妙な工程が構成されたわけだ。・・・」(平井呈一訳) 水木のテキストと比較してみてほしい。(2005.3.13記)